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2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体と今後の課題
伊藤久雄(NPO法人まちぽっと理事)
環境省の調査によると、2021年12月28日時点で、514自治体(40都道府県、306市、14特別区、130町、24村)が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明している(以下、ゼロカーボンシティという)。都内では東京都のほか、14特別区、6市、1村の合計22自治体になる。
本稿では、環境省の調査結果(2050年二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組等、参考資料参照)から、都内22自治体の取組み等について一覧をつくり、その特徴と今後の課題を考えたいと思う。
1.都内のゼロカーボンシティ表明自治体
都内は先述のように、東京都を含めて1都14区6市1村が表明している。その表明概要と脱炭素に向けた取組み・施策は別紙一覧表のとおりである。
2.都内自治体の取組み・施策の特徴
地球温暖化対策の推進に関する法律(最終改正:平成28年5月27日法律第50号)は、「都道府県及び市町村は、単独で又は共同して、地球温暖化対策計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする」と定めている。この規定に基づき【区域施策編】を定めているのは、豊島区、調布市、中央区である(多摩市は策定予定、杉並区は今後策定するとしている)。なお国立市と江東区は【事務事業編】を定めている。
【区域施策編】は、「その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策に関す事項として次に掲げるものを定めるものとする」とされている。
1 太陽光、風力その他の再生可能エネルギーであって、その区域の自然的条件に適したものの利用の促進に関する事項
2 その利用に伴って排出される温室効果ガスの量がより少ない製品及び役務の利用その他のその区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の制御等に関して行う活動の促進に関する事項
3 都市機能の集約の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進、都市における緑化の保全及び緑化の推進その他の温室効果ガスの排出の抑制等に資する地域環境の整備及び改善に関する事項
4 その区域内における廃棄物等(循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)第2条第2項に規定する廃棄物等をいう。)の発生の抑制その他の循環型社会(同条第1項に規定する循環型社会をいう。)の形成に関する事項
また【事務事業編】は、地方公共団体の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置に関する計画である。
なお地球温暖化対策推進は、「都道府県及び市町村は、単独で又は共同して」実行計画の策定に努めることとされているが、都内自治体では東京都もふくめて共同して計画を策定したところはない。
- 江東区の取組み・施策をみる
(1)でみたように、(1) 地球温暖化対策実行計画【区域施策編】もしくは【事務事業編】を策定している自治体は少ない(ただし。下記その他自治体も既存計画に地球温暖化対策実行計画を付加しているところもあるかもしれないが、個々の自治体を調べる余裕はないので、またの機会としたい)。
その他の自治体は、環境基本計画や「地球温暖化対策地域推進計画(世田谷区)などの既存計画の改定、見直しが多い。個々の自治体の取組みを取り上げるのは困難なので、ここでは割愛し、一覧表の「脱衣炭素に向けた主な取組・施策」で、取組・施策項目が最も多い江東区の取組みを少し詳しくみてみたいと思う。
<チーム江東・環境配慮推進計画(第3次庁内環境配慮推進計画>
この計画は、地球温暖化対策推進法で定められている「地球温暖化対策地方公共団体実行計画(事務事業編)」に相当しており、区が一事業者として、資源・エネルギー消費量削減及び温室効果ガス(主にCO2)排出量抑制の目標を定め、環境負荷低減に取り組むためのもの。職員は本計画に従い、環境配慮行動を徹底していく。
これまで、平成12年度から21年度を計画期間として「江東区庁内環境配慮推進計画(第1次計画)」を、平成22年度から31年度を計画期間として「チーム江東・環境配慮推進計画(第2次庁内環境配慮推進計画)」を策定してきた。
前計画期間終了に伴い、令和2年3月に「チーム江東・環境配慮推進計画(第3次庁内環境配慮推進計画)」を策定した。改定に伴い、管理指標の変更、職員の担当業務に応じた環境配慮に係る取組事項の見直しを行った。
<令和元年度地球温暖化対策報告書(R2年度提出)>
江東区は平成23年度(24年度提出)から毎年度、地球温暖化対策報告書を提出している。ここでは最も新しい令和元年度(令和2年度提出)の報告書をみておきたい。
報告書は次の4通りが作成されている。
【区長部局】地球温暖化対策報告書(その1)
【区長部局】地球温暖化対策報告書(その2)
【教育委員会】地球温暖化対策報告書(その1)
【教育委員会】地球温暖化対策報告書(その2
【区長部局】地球温暖化対策報告書(その1)は、二酸化炭素排出量が報告され、(その2)は、原油換算エネルギー使用量及び二酸化炭素排出量が報告されている。(その1)には特記事項が記されているので紹介する。
◆江東区では、これまでも庁内環境配慮推進計画を策定し、区役所で所管する施設の温室効果ガス削減に努めてきた。第2次庁内環境配慮推進計画の計画期間終了に伴い、令和元年度末に令和2年度から11年度を計画期間とする第3次庁内環境配慮推進計画を策定した。
◆庁有車の契約更新時期に、随時、低公害自動車等へ切り替えている。
◆江東区役所(本庁舎)駐車場及び豊洲シビックセンター駐車場に電気自動車用の急速充電器を設置し、区民への無料開放を平成22年度より実施している。
◆江東区では、これまでも庁内環境配慮推進計画を策定し、区役所で所管する施設の温室効果ガス削減に努めてきた。第2次庁内環境配慮推進計画の計画期間終了に伴い、令和元年度末に令和2年度から11年度を計画期間とする第3次庁内環境配慮推進計画を策定した。
◆庁有車の契約更新時期に、随時、低公害自動車等へ切り替えている。
◆江東区役所(本庁舎)駐車場及び豊洲シビックセンター駐車場に電気自動車用の急速充電器を設置し、区民への無料開放を平成22年度より実施している。
<(個人住宅用・集合住宅用)地球温暖化防止設備導入助成>
江東区は、(個人住宅用・集合住宅用)地球温暖化防止設備導入助成事業を行っている。江東区では、区内に太陽光発電や省エネルギー設備等を導入する個人・事業者・管理組合等に対し、設置費用の一部を助成し、地球温暖化防止対策を推進している。住宅用の助成制度は、個人住宅用と集合住宅用に分かれており、助成対象者や助成要件等がそれぞれ異なる。
この事業の助成金の交付は、同一住宅につき、助成対象設備の種類ごとに過去5年以内で1回限りとなる(当該申請年度も含む)。助成対象設備の種類・説助成金額等は以下のとおり(詳細は参考資料参照)。
- 太陽光発電システム
【助成金額】
太陽電池モジュールの公称最大出力の合計値
1kW(キロワット)あたり50,000円(上限額:個人住宅は200,000円まで、集合住宅で共用部分に連系する場合は1,500,000円まで)
- CO2冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュート)
【助成金額】
設置に要する経費の5%(上限1設備当たり個人住宅は40,000円まで)※集合住宅は対象外となる。
3 家庭用燃料電池装置(エネファーム)
【助成金額】
設置に要する経費の5%(上限額:個人住宅は100,000円まで)※集合住宅は対象外と
なる。
4 エネルギー管理システム機器(HEMS)
【助成金額】
設置に要する経費の5%(上限額:個人住宅は20,000円まで、集合住宅は150,000円まで)
5 高反射率塗装
【助成金額】
施工面積1平方メートルあたり1,000円を乗じた額(施工面積は、小数点第3位以下切り捨)
(上限額:個人住宅は200,000円まで、集合住宅は1,500,000円まで)※施工面積は、屋根、屋上及びベランダ(太陽光熱が反射する部分に限る)
6 蓄電池
【助成金額】
設置に要する経費の5%(上限額:個人住宅は100,000円、集合住宅は500,000円まで)※太陽光発電システムまたは家庭用燃料電池装置(エネファーム)と常時接続している ことが要件となる。
7 高断熱窓
【助成金額】
設置に要する経費の10%(上限額:個人住宅は100,000円、集合住宅は1,000,000円まで)※新築は対象外となる。
8 LED照明(集合住宅の共用部分のみ)
【助成金額】
設置に要する経費の10%(上限額:500,000円まで)※新築・新規設置は対象外となる。
3.今後の課題
江東区の取組みである助成事業は非常に細かい事業だと思う。他の自治体の取組・施策も詳細にみるには、環境に限らず多くの科学的、技術的知見が必要だと思われる。また地球温暖化問題自体も、科学的知見が必要とされる。したがって、東京都などが主催して、カーボンシティ表明自治体だけでなく、これから表明の準備をしている自治体などもふくめて、取組・施策の交流会などの開催が不可欠だと考える。
また、都内ゼロカーボンシティ表明一覧でみるように、2020年末の表明自治体は東京都をふくめて4自治体に過ぎなかった。しかし、2021年には18自治体が表明するなど、表明自治体が急速に拡大している、したがって東京都なども、表明自治体の取組内容、施策(計画など)を詳細に紹介することも必要ではないかと思う。それは、これから表明することを考えている自治体への支援のみならず、地域の市民、事業者などの啓発にもなると思うからである。
<参考資料>